【春と秋だけのとっておき】近江八幡の知る人ぞ知る名所「教林坊」。苔と紅葉の石の寺へ
観光地として知られる近江八幡に、驚くほど静かな場所があることをご存じでしょうか。
教林坊は、聖徳太子ゆかりの歴史を持つ「石の寺」。
石の参道、苔の庭、赤く染まる紅葉。境内に足を踏み入れると、時間がゆっくりと流れはじめます。
春と秋、限られた期間だけ公開されるこの場所で、にぎわいから少し離れた、静かな近江八幡を感じてみませんか。
Index
教林坊の歴史 ― 聖徳太子と安産の観音様
教林坊は、推古十三年(605年)に聖徳太子によって創建されたと伝えられる、非常に歴史の古いお寺です。
その名の通り、太子がこの地の林の中で人々に教えを説いたことが、「教林坊」という名前の由来とされています。
ご本尊は、聖徳太子自作と伝わる石仏。この石仏には、次のような言い伝えが残されています。
昔、子宝に恵まれた村娘が難産に苦しんだ際、この石仏に祈りを捧げたところ、無事に子どもを出産することができたといいます。そのとき、石仏のそばを流れる小川が産血で赤く染まったことから、この観音様は 「赤川観音(あかがわかんのん)」 と呼ばれるようになりました。
この言い伝えから、教林坊は再度詣り(もうで)による心願成就のほか、良縁成就・子授け・安産の観音様として、今も多くの人々から篤く信仰されています。
参拝・撮影にあたっての大切なお願い
教林坊は、現在も信仰の場である宗教施設であり、同時に貴重な庭園文化財でもあります。そのため、以下の点への配慮が呼びかけられています。
- 境内の名勝庭園は通路が狭く、庭園文化財の保護や混雑時の事故防止の観点から、 写真撮影を目的とした長時間の滞在は控えるようお願いされています。
苔や庭園の保護のため、苔を踏まないよう、決められた通路を歩いての拝観が必要です。
混雑状況によっては、建物内部の拝観ができない場合もあります。
静かな祈りの場であること、そして大切に守られてきた庭園であることを意識しながら、心静かに参拝したい場所です。
教林坊へのアクセス
教林坊は、近江八幡市の里山に位置するため、車またはタクシーでのアクセスが便利です。
▶車でのアクセス
名神高速道路・竜王ICより
国道8号線を経由して約20分名神高速道路・彦根ICより
国道8号線を経由して約45分
▶公共交通機関でのアクセス
JR安土駅よりタクシーで約10分
里山にある静かな立地のため、徒歩や自転車での訪問は距離的に少し大変です。
安心して訪れるなら、車またはタクシーの利用がおすすめです。
写真家にも人気のスポット。
教林坊は、その静けさと石と緑が織りなす風景から、写真好きの人たちにも密かに人気のスポットです。
苔むした石段、木漏れ日が差し込む参道、紅葉の季節には石と紅葉のコントラストが美しく、ファインダー越しに切り取りたくなる景色が、境内のあちこちに広がっています。
ただし、教林坊は今も大切に守られている信仰の場であり、名勝庭園です。
そのため、写真撮影を目的とした長時間の滞在は控えるようお願いされています。
短い時間でも、そっとシャッターを切り、静かにその場を離れる…そんな心配りとともに楽しみたい場所です。
私の「教林坊のすきなところ」
私が教林坊でいちばん好きなのは、とにかく静かなところです。
観光地として知られている場所なのに、境内に入ると、不思議なくらい音が少なくなります。
聞こえてくるのは、風に揺れる葉の音や、足元の石の感触くらい。
その静けさが、気持ちまでゆっくりさせてくれる場所です。
そしてもうひとつは、赤く染まる紅葉の美しさ。
秋の教林坊は、ただ「紅葉がきれい」という言葉だけでは足りないほど、深い赤が石の参道や苔の緑と重なって、静かな中に、はっとするような鮮やかさを見せてくれます。
それからもうひとつ、時間を忘れるほど、ぼーっとできるところも好きです。
書院に座って、何も考えずに景色を眺めていると、気づけば思っていたよりも時間が経っていて、「こんなに長くいたんだ」と、あとから驚くこともあります。
にぎやかに楽しむ紅葉もいいけれど、静けさの中で、赤い紅葉と向き合いながら、 時間を忘れて過ごせること。
それが、私にとっての教林坊のいちばんの魅力です。
教林坊の御朱印とお守り
教林坊では、参拝の記念として御朱印やお守りを受けることができます。
ご本尊が聖徳太子自作と伝わる石仏であり、良縁成就・子授け・安産の観音様(赤川観音)として信仰されていることから、それぞれの願いに寄り添う授与品が用意されています。
社務所の一角には、ひとつひとつ大切に並べられた御朱印やお守り、お香や小さな授与品が、静かな空間の中に整然と置かれています。
華やかすぎず、どこか素朴で温かみのある雰囲気は、教林坊の空気感そのもの。
参拝を終えたあと、気持ちをそっと持ち帰るような感覚で、御朱印やお守りを選ぶ時間も、ここならではのひとときです。
教林坊のライトアップと公開期間について
紅葉の季節、教林坊では期間限定で夜のライトアップが行われます。
昼間の穏やかな表情とは一転し、夜の境内は、光と闇が織りなす幻想的な空間へと姿を変えます。
やわらかな光に照らされる石の参道、闇の中に浮かび上がる紅葉の赤。
静けさに包まれた境内に、昼とはまったく違う「もうひとつの教林坊」が現れます。
にぎやかな演出ではなく、あくまで静かに、そして美しく照らされるのが教林坊のライトアップ。
その落ち着いた雰囲気は、「夜にこそ訪れてほしい」と思わせてくれる特別な時間です。
◆ 2025年の紅葉ライトアップについて
ライトアップ期間:11月15日〜12月5日
夜間拝観は19:00まで
最終受付は18:30まで
やわらかな光に包まれる教林坊は、昼とはまったく違う表情を見せてくれます。ただし、夜は足元が暗くなるため、歩きやすい靴での拝観がおすすめです。
※公開日程やライトアップ期間は年によって変更される場合があります。訪問前に必ず最新情報をご確認ください。
駐車場と周辺の注意点
教林坊には、参拝者用の駐車場が用意されています。
普通車:約80台
大型バス:約8台
秋の特別公開など、混雑が予想される期間には、現地で誘導スタッフの方が案内をしてくださいます。
その際は、誘導員の指示に従い、一方通行で通行するようにしましょう。
周辺は道幅があまり広くない場所もあるため、安全のためにも、現地案内に従ってゆっくり走行するのがおすすめです。
また、ライトアップの時間帯は特に混雑しやすくなります。
時間に余裕をもって到着できるよう、早めの行動を意識すると安心です。
教林坊の写真集
私が実際に訪れて心に残った、教林坊の風景を写真にまとめました。
静かな境内や、赤く染まる紅葉、時間を忘れてしまうような、そんな瞬間ばかりです。
「行ってみたいな」と思っていただけたら、それだけでとても嬉しいです。
どうぞ、教林坊の写真をお楽しみください。































にぎやかな観光地だけでなく、静かに時間を過ごせる場所に惹かれて、取材しています。